敵わない










「なぁ、バニーちゃん」

基本、性欲というのは思春期をピークに年齢と共に徐々に減衰していく。

「バニーちゃーん」

よって、二十代と三十後半を比較すれば絶対的に二十代の方が性欲旺盛だ。

「バニバニバニーちゃーん」

経験値では負けてしまうことは自覚していた。ならばその若さと旺盛な性欲を武器に
回数でなら勝てると思っていた。

「っつーかシーツ返してくんね?オジサン、寒いんだけど?」

年と共に遅漏気味になっていたとしても、回数こなせば最終的に自分が優位になると
思っていたのに・・・

「聞いてるバニーちゃん?」
「五月蝿いですよ!というかもっと労って下さい!」
「なんで!?そもそも掘られたの俺だぜ?俺を労れよ!っつーかシーツから出ろ!」
「黙ってて下さい!」
「逆ギレかよ!?」

繭のようにシーツに包まったまま、恥ずかしさと悔しさでオジサンの顔を見ることが
できなかった。





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今日もまた、出動要請を受ける。
ショーアップされているとはいえ、相手は常に悪人だ。追いつめられた犯人がどんな
暴挙に出るかもわからないため、常に命掛けの戦い。そして、今日はいつも以上に
手強い相手だった。
強靱な脚力を持ち韋駄天の能力を発動するNEXTで、さらにそのスピードを活かしたまま
銃火器を扱う犯人だった。
当然、真っ向勝負できるのはスピードを売りとするバーナビー・ブルックスJr.自分一人だけだ。
ハンドレッドパワーを駆使しても、その素早さに追いついていくので精一杯な状態
しかも向こうはそのスピードで容赦なく攻撃してくるのだから、かわすのにも必死だ。
銃撃をスーツでガードしながら、僅かに見えた進路の先。
パートナーであるワイルドタイガーがこちらに向けて右手を構えていた。
直ぐにワイルドタイガーの思考を理解し、敵の注意を
こちらに引きつけるために、浴びせられる銃弾を避けることなく限界のスピードで間合いを
詰める。
敵が背後のバーナビーに集中した次の瞬間、ワイルドタイガーの右腕から放たれたロープが
犯人の胴に絡まった。

「うぉぉぉおおおおぉりゃぁああ!」

発動されたハンドレッドパワーによって、勢い良くロープを引き寄せる。加速する
敵のスピードがワイルドタイガーの力で減速された。
が、次の瞬間、両端にかかる強力なエネルギーによって、耐性を越えたロープが派手な
音を立ててちぎれてしまった。その反動で両者ともに吹っ飛ばされてしまった。
敵が起きあがる前に取り押さえなければ!
ハンドレッドパワー終了まで残り僅か、更に加速させ片をつけようとした次の瞬間
上体を起こした犯人が何かを投げつけてきた。

「オジサン!」

咄嗟に進路を変え、減速することもなくワイルドタイガーにタックルをかます。
次に感じたのは手榴弾による全身を叩きつけるような衝撃波だった。





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「生きてるって感じがすんなぁ」

赤く染まった目元はいつもより水分を湛えていて、僅かに細められた目は今にも涙が
こぼれ落ちそうだった。噛みつくようなキスを繰り返していたから、唇も赤く腫れ
ぼったい。
いつものように唇を噛んで息を殺すこともなく、感じるままに吐息をこぼす。中に
埋まったもの全部を感じるように、ゆっくりじっくり腰を揺らした。
激しすぎず、焦れるようなその動きに、挿れているのはこちらなのに、なんだか自分が
捕食されているような気分になってきた。
それがなんだか悔しくて、下から突き上げれば、小さく鳴いて、フッと笑った。
いつもみたいながさつな笑い方じゃなくて、口角を片方だけあげた、大人の余裕の笑み。
子供のイタズラを愛おしそうに宥めるような笑い方だった。
こんな状況で見せるその余裕。経験の差を見せつけられたような気がして癪に障る。

「クソッ!」

体重を支えている両手を無理矢理引き寄せ、抱きしめる。密着した肌は熱く湿っていて
鼓動が伝わってきた。
動きにくくなった体勢のまま、むちゃくちゃに下から突き動かす。逃げられないように
細い腰を押さえていた手をそのまま肉厚な臀部に下ろし、腰の動きと共に揉みしだいた。

「バニーちゃん・・・やら、しぃ・・・なぁ・・・」
「うるさいですよ!」

耳元でそんな風に囁かれて、照れ隠しで目の前の首筋に噛みついた。だが、その刺激で
ぎゅっと締めあげられてしまい、思わずそのまま強く噛んでしまった。
いつもだったら、耐えられるのに・・・





『悪ぃなバニーちゃん、今日ちょっと止まんねぇわ』

出動要請があったあとは、必ずと言っていいほど抱き合っていた。
だが、今日は違った。
あの危機的状況で生き延びた。助けられた。その歓びが本能にリンクして、欲求を
抑えることもできずに二人もつれ合う。玄関に入った瞬間、押し倒されて口でイかされた。
そしてそのままのっかかろうとするオジサンにゴムがないと突っぱねた。

『着けなくていい』

普段は決してゴムがなければセックスしない。
それはヒーローである自分達はいつ出動要請が来るか分からないし、健康の為にも
必ずセーフティセックスしかしない、と決めていたからだ。自分達の快楽よりも
仕事を優先する。
それは絶対だった。
なのに、オジサンは一瞬驚いたものの、直ぐにニィッと笑って、自分で後ろを解し始めた。

『着けなくていい。今日は生でバニーちゃんを感じたいんだよ』

その言葉がトリガーになって、気が付けば形勢逆転。
俺がオジサンを押し倒して、解れきっていない後孔に根本までずっぷりとねじ込み
ガンガンに腰を振っていた。
初めて感じた生の感覚は、ゴムの時とは比較しようもないほどの熱と直に吸い付くような
内壁の動きに、抜かずの2発を経験してしまった。2度目の射精後、やっと思考が働き始め
そして自分が2度も射精していたのに、オジサンは一度もイっていないことに気付いて
慌てて中から自分のものを引き抜いた。いつもならゴムに溜まっている精液が、赤くなった
後孔からどぷり、と音を立ててこぼれる。強烈な画に目が離せなくなった。思わず、指を
そっと押し込む。未だオーガズムを迎えていないその内壁は、精液を絡む指に快楽の続きを
強請るように絡み付いてきた。
ごくり、と喉が鳴る。

『バニーちゃん』

その声にハッと現実に引き戻された。

『もう、中いっぱいでこぼれちまうから、ベッドまで運んでくんね?』

そう言って両手を広げてきたオジサンを横抱きに抱いて、ベッドまで運んだ。
精液が伝い落ちる内腿をそのままに僕を跨ぐと嬉しそうに腰を落として、気持ちよさそうに
腰を揺らし始めた。





既に3度も射精しているというのに、厭らしい腰の動きのせいでもう限界を迎えそうに
なってきた。

「オジ、さ・・・・・・も、・・・無理、です」

歯を食いしばって必死で快感に耐える。だが、もう自制が効かない。

「バニーちゃん、若い・・・ねぇ・・・」
「うっ・・・さ、い!」

腰の律動を始めるより先にオジサンが身体を起こした。再びベッドに手を付いて身体を
支えると、それまで奥深く埋まっていたソレをぎりぎりまで引き抜く。ゆっくりとした
動作が、逆に焦れったくて悶えそうになる。
だが、次の瞬間、根本をぎゅっと掴まれ、思わず声を上げてしまった。
何するんですか!と睨み付ければ、楽しそうに笑うオジサンが片手で俺の根本を掴んだまま
小さく腰を揺すり始めた。

「俺も楽しませろよ」

そうしてカリを何度も前立腺に擦りつけるように、浅く腰を抽出させ、快感を貪る。
こっちは痛みと射精できない苦しさもどかしさと目の前の痴態をさらすオジサンに頭が
パニックになりそうだった。

「・・・やば・・・気持ちいぃ、な・・・」

うっとりと悦楽に浸るその表情は下半身直撃過ぎて、思わず腕で視界を遮る。
それを面白がるようにクチクチと抽出しながら腕を外そうとするから憎たらしい。

「バニーちゃん、可愛い・・・」

そういって腕に小さなキスを繰り返し与えられて、思わず腕を外してしまった。
よく出来ました、と言わんばかりに今度は顔中にキスの雨が降って、再び抽出に集中する。
何度かオジサンの身体が痙攣すると、手を離し、再び根本まで咥え込まれる。
苦しさからの解放に、ホッと息を吐くと、今度はこっちが腕を引かれる。

「っ!?」

腕を引いたオジサンがそのまま後ろに倒れ込み、騎乗位から正常位の体勢に変わった。
先ほどまで根本を掴んでいたオジサンの手が、僕の顎に触れた。

「あと3回、とは言わねぇからさ・・・」
「?」
「生きてるって実感する程めっちゃくちゃにしてくれよ」
「上等ですよっ!」

そういって息を奪うほどの勢いでキスをして、天国の扉をノックするためにめちゃくちゃに
腰を振った。





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「なー何で怒ってんだよ。俺ちゃんと2回で我慢しただろ」
「何が『2回で』ですか!?こっちは遅漏気味のオジサン2回イかす為に何度イかされたと
思うんですか!?」
「あー・・・そこは若者に頑張って頂こうと思うわけで・・・」
「頑張るどころかこっちは死ぬかと思ったんですけど」
「腹上死って一度は憧れねぇ?」
「黙れオジサン」

結局のところ、あのあともう1R強請られて頑張ったものの、スッカラカンに搾り取られて
気を失うように眠ってしまった。本来なら挿れる側のこちらが色々とリードしなければ
ならないのに、毎回こんな感じで醜態を晒す羽目になるのだ。
経験の差、というものがこんなにも影響するなんて・・・。
数ヶ月前の若さと性欲なら勝てる!と思っていた自分を蹴り飛ばしたい、本気で。

そうやってシーツの繭の中で一人反省会をしていると、ふとシーツ越しの背中に温かさを
感じた。

「生きてるってちゃんと分かった。お前も、俺も」
「当たり前じゃないですか。むしろこっちはオジサンに殺されかけましたよ」
「悪ぃな、でも、嬉しかったんだよ。生きてるって」

何となく、気まずくなって、被っていたシーツから頭を出した。そっと振り向けばオジサンが
嬉しそうにいつもの屈託のない笑顔を見せていた。強烈な数時間のせいで、その笑顔を見るのが
久々のような気がする。

「タックルでぶつかりましたけど・・・大丈夫でしたか?」

そっと手を伸ばし頬に触れる。
ちゃんと温かい。

「おう、俺も能力発動してたしな。それより、バニーちゃんこそ爆風大丈夫だったのか?」
「オジサンと違ってちゃんと鍛えてるので」
「可愛くねぇなあ!」

自然と顔が近付いて、そのまま唇を重ねる。
昨日の激しさが嘘のような可愛らしいものだった。

「しばらく生は禁止です」
「そうだなぁ、バニーちゃんが持たないしな」
「違います!オジサンが淫乱なんでしょう!」
「悪いか?」

あっけらかんと言い切って笑うから、悔しくなってキスをしたまま押し倒した。

「いつか絶対鳴かせます!」
「おう!楽しみにしてるぜ」

絡みつく舌を感じながら、当分この人には敵わないと思った。










2011.05.27 しゅう


童貞チックな兎が「回数なら勝てる!」とか思ってたんだけど、むしろ中年盛りな虎にテクも回数も時間でも
負けて傷心気味な兎(攻)を慰める虎(受)とかいいと思うな(*・x・) というツイートから。
今思うと本当ただ単にエロが書きたかったんだな、と。
戦闘シーンはさらっと流し読みして下さいお願いしますw