Where should I go tomorrow




















「僕からいくつか質問してもいいですか?」
質問をぶつけてみる。
「いいぜ」
「三年前、僕と貴方が相棒だったとき、僕に恋人やそういった感じの特別な人はいましたか?」
「よく友達いないだろってからかってたな。恋人は…俺が知る限りではいなかったはずだ」
「虎徹さんは、僕の家に遊びに来たことありますか?」
「酒飲みに何回か遊びに行ったぜ」
「では…」
ずっと感じていた違和感の原因を、虎徹さんに聞いてみた。
「あの当時、虎徹さんは僕のことを何て呼んでました?」
「バーナビー」
嘘だ。自分の中の何かが告げる。
「嘘つかないで下さい」
「…何で嘘だって分かるんだよ」
この人は何かを隠してる。
「みなさんが貴方のことを話すときに僕の固有名詞が『バーナビー』ではなく『バニー』だったんですよ」
そう言うと虎徹さんはそれまで淡々と答えていたのに、急に黙り込んだ。
「なのに、昨日会ってから今まで貴方はずっと僕のこと『バーナビー』と呼んでいる。それはどうしてですか?」
「…」
「それから…」
さっきの虎徹さんの言葉を今度は僕が聞き返す。
「僕たちはセックスするような関係だったんですか?」
静かな車内にはエンジン音だけが響き、虎徹さんは何も答えないまま運転を続ける。
「答えて下さい」
「世の中には知らない方が幸せってことがあるんだぞ」
「いいから答えて下さい!!」
はぐらかされるのが癪に障ってつい大声を出してしまった。ハッと我に返り、苛立っている自分が恥ずかしくなる。
「楓ちゃんから聞きました…」
「何を?」
「貴方が、楓ちゃんに鏑木・T・虎徹の記憶を復元しないように頼んだことを」
「昨日話してたのはそれか」
「そうです。…どうしてそんなことを頼んだんですか?そしてどうして他のヒーロー達に貴方の存在を僕に話さないよう口止めしたんですか!?」
虎徹さんは黙ったまま大きくハンドルをきった。
「ドライブは終了だ。家に帰ってゆっくり話そう」
気付けばフロントガラスから見える空は、少しずつ赤みを増していた。