手のひらの上の恋人
首筋に唇を当て、ちゅっちゅっと音を立て押し当てていく。時折鼻先で擽ったり匂いを嗅いだりしながら首筋から鎖骨まで汲まなく肌に触れていく。家に招いてすぐにジャケットは預かったものの、下に着ている黒のTシャツだけは脱がせるタイミングが見つからず、そのまま拘束してしまったせいで脱がせることができなかった。破ったら・・・それはさすがに怒られるだろう。だけど、素肌に触れたくて仕方なくシャツをめくると首もとまでたくしあげてやる。
「何がしたいんですか?!」
「何って…ナニだろ?」
「答えになってません!人縛ってまでしたいことで、っふぁ?!」
「俺は別に構わねーけど、喋ってっと可愛い声まで出ちまうぞー」
シャツの下から現れた白く彫刻のように美しい胸筋をなぞるように舐めあげればバニーが漏れそうになる声を抑えるために唇を噛んでしまった。
あーあ、俺は別に構わないって言ったのに…。
バニーのしっかりと鍛え上げられた胸筋にも変わらずキスしたり舐めたり汲まなく唇や手で触れる。これといったテクニックが無くても丹念に触れていればそれも立派な愛撫になるんだ。バニーの良いところを探すように、そっと、でも時々強く、強弱をつけながら滑らかな素肌に触れていく。
声が出せない分、良いところに触れるとびくびくと体が震えるからそれを合図に、触れ方を変えてみたり、舌で舐めてみたりしながら反応を見るのが楽しい。
触れる肌が徐々に熱を持ち、声を殺しているせいで時折ふうふうと漏らす吐息が可愛くてしょうがない。
「バニー…気持ちいい?」
「腕の拘束と目隠しを外されてたらもっと気持ちいいんでしょうけどね」
俺に主導権を握られ喘がされてるのが気に食わないのか、相変わらずの減らず口。でも今はそんな態度でさえ子供っぽい抵抗にしか感じられず可愛いだけだ。…それを口に出してしまえば本気で抵抗されるけどな。
再び愛撫に戻る。胸筋から腹筋へ。脇腹のはっきりとした筋肉の筋に同性ながら惚れ惚れしてしまう。
バニーは足技が中心だが、その強烈な脚力を生み出すためにもみっちりと上半身を鍛えている。人種の違いもあってか、パンチをメインとする俺並かそれ以上にしっかりと鍛え上げられている。
普段は着痩せするせいなのか細身に見えるが、脱いだときに現れる男らしい肉体美、そのギャップにやられる女性は相変わらず後を絶たない。
多分、あの女優もその一人だろう。グラビアではなく、この体に直に触れたいと思ってこの兎を罠にかけようとしたんだろう。
けど、この体に触れていいのは俺だけだ。その事実が優越感となり、快感に変わる。バニーを誘惑できる美しい体を持っていることへの嫉妬と現実に自分だけが触れることを許されているという優越感に突き動かされるようにバニーの腹筋に舌を這わせる。舐め上げる度に硬くなる腹筋に唇を落とし、掌で形を確かめるように触れる。綺麗に整っている臍を鼻先で擽れば、頭上からスタッカートが掛かったように短い吐息が漏れて、それに気をよくして舌や指先でいじっていると今度ははっきりと
「そこばっかり止めてください!」
制止されてしまったから、キスを一つ落として大人しく解放してやった。
上半身を汲まなく愛撫し終わる頃にはバニーの上半身は俺の唾液で濡れ、白い肌はほのかに赤く染まっている。先ほどから跨っている腰は布越しでも分かるほど熱くたぎっている。試しに密着している股間を押しつけるように腰を振れば、ゴリッと硬い感触に思わず唾を飲み込んでしまった。互いのものを確かめるように腰を何度も押しつける。腰の振りが徐々に大きくなり、グライドするような動きになるころには互いに上がる息を堪えず、焦れったい快感にもどかしいように腰を振っていた。
「…こて、つ…さん…」
バニーに呼ばれ、ハッと我に返る。違う、今日の目的はこれじゃない。慌てて腰を離すと、いそいそと場所を移動した。バニーは今まで熱く重なっていた腰から急に熱が消えたことを不思議に思ったのか、視界を奪われているにも関わらず現状を確認しようと頭を上げ、こちらを探っている。
そうしてまもなく、腹部からカチャカチャという金属音が聞こえ、俺が今何をしているのか分かったらしい。
「なっ?!」
カーゴパンツの前をくつろげるとそのまま下着もろとも一気に膝下にまでずり下ろす。窮屈だったそこが一気に脱げたせいで勢いよく飛び出した性器に思わず口笛を吹けば、バニーが「下品ですよ!」と太腿で前を隠そうとする。だが、膝の辺りに引っかかったパンツのせいでうまく足が動かせないらしい。腕も縛られ足も自由に動かせなくなったバニーはそれでも抵抗しようとして嗜虐芯を煽る。
露わになった胸元から膝下までを眺め、俺は喉を鳴らした。
自分もまた準備の為に身につけている衣類を全て脱ぎ捨てる。服を脱がされて以降一切触れられないことに不安そうなバニーの額にキスを落として安心させてやる。
さて、と。
再びバニーの膝の辺りに跨ると、眼下で主張している性器に手を伸ばす。突然の感覚にバニーがびくりと震えるから、両手で安心させるようにさすってやる。だが、それすらも刺激になるのか、より一層硬度を増したのを掌で感じ、口の中に唾液が溜まるのが分かった。
力加減を変えながら何度も掌を上下させると、瞬く間に先端からぷくりと体液が溢れでてきた。そのまま擦り続ければトロトロと溢れ、全体に伸ばせる程の量にまでなった。粘度のあるその液体を掌で全体に伸ばして滑りをよくする。
ワザとバニーにも聞こえるようにニチャニチャと水音を立てれば、バニーの顔が一瞬にして真っ赤に染まった。いつもは俺がこんな風にバニーのものを触ることはない。基本は準備としてバニーが俺の後ろの穴を解す程度で、こんな風に触れ合うこと自体無かったから、改めてまじまじとバニーのものを見て、触れてみる。
カリ首のところを指で輪っかを作り擦ってやれば、バニーの腰が細かく震える。根本からちょっと強めにしごきあげれば太股にぐっと力が入るのが分かった。体液をこぼし続ける先端の穴を優しく撫でるように触れれば、バニーの息が甘くなる。
俺のよりも人種の違いか、素肌のように幾分か白く、血流で赤く染まり、形も長さと太さがしっかりある。逞しく美しい肉体同様、ここも綺麗な形をしていて同性のものなのに見ていて飽きない。
そっと唇を落とすと唇に火照った熱とぬるりとした液体の感触。普段は微かに感じる匂いを鼻先で強く感じ、体が興奮でぶるりと震えるのが分かった。
体を重ねる度に、ここにこうして触れたい、キスしたいと思っていた。だが、以前一度だけフェラしようとして、バニーから「そういうことはしなくていいです」と断られたことがあって以来、その言葉に従うように触れないようにしていた。
バニー自身潔癖っぽいところがあるから触られたり口で咥えられたりすることに抵抗があるのか、それとも過去の経験でそういう行為をされて嫌なことがあったのか、それとも同性同士でそういう行為をする必要はないと思っているのか。理由を聞けぬままただタブーとされていたけど、それを大人しく従ってるようなままじゃ駄目だ。
手を添え、最初は唇を押し当てる程度のキスを、それから場所を変えては少しずつ強く吸いつくようなキスに変化させていく。
「…こて、…さ…だめで、す…」
頭上から漏れそうになる吐息をかみ殺しながらバニーが制止の声を上げる。
「なんで?」
「なんで…て…それは…ふはっ」
バニーの言葉を遮るように先端に口づけチュウと吸い上げれば、バニーの男根が大きくびくんと震え、口の中に苦い先走りが一気に広がる。だが、その味に嫌悪感は芽生えない。それがバニーが感じている証拠だと思うと、苦みすら甘い蜜のように感じられる。もう限界だと思っていた硬度が更に増し、バニーが感じてくれているんだと思うとその苦みすら愛おしい。