Yum yum!




















「色んなアイスをちょこっとずつ食べれるって幸せだよな」

そういうから僕も自分の分のストロベリーフレーバーのアイスの封をきる。綺麗なピンク色はチープなアイスとは違って思ったより甘すぎず、イチゴ独特の酸味とミルクの風味も生きている。

「バニー、ほらあーん」

スプーンに盛った濃い緑色のそれを差し出され、いわれるがままに口を開ける。Green tea独特の苦みをミルクと糖分がまろやかにして、ほろ苦さを生み出していた。今度は代わりに僕がストロベリーフレーバーのアイスを掬い、虎徹さんの口元に運ぶ。乗っていたアイスが虎徹さんの舌の熱さで溶け、空っぽになって戻ってくる。代わりにテーブルに置かれたナッツ入りのアイスを掬って、今度は僕の口に戻ってくる。 無言で二人、三種類のアイスを次々に口に運んでいく。口の中には甘さが広がっているのに、中年おじさんと青年の僕が二人、黙々とアイスを食べてるのはシビアな風景だ。

そんなことを考えていると、ふと、太股に何かが触れた。視線を落とせばソファーで向かい合って座っている虎徹さんの靴下をはいていない素足。なんですか?と顔を上げて虎徹さんの方を見れば、知らぬそぶりで相変わらずアイスを食べている。

「虎徹さん、行儀悪いですよ」
「んーいいじゃん、二人っきりなんだし。それよりアイス溶けちまうぞ」

人の忠告を無視して、虎徹さんはそのままアイスを食べ続ける。太股に乗った足は、じわじわと僕の中心部へと移動させながら。

「虎徹さん!食べるか誘うかどっちかにしてください!」

その言葉に、ちらり、と虎徹さんが上目遣いでこちらの様子をうかがうと、また知らんぷりしてアイスを食べ始めた。スプーンでアイスを掬い、口に運ぶ。ほろ苦い味わいと冷たい甘さを堪能するとまたスプーンでアイスを掬い、口に運ぶ。

その単純な作業に今度は足の動きが加わった。太股に置かれた足はすでに僕の股間に移り、足の裏に少し力を加えゆっくりとした動作で擦り上げる。手とは違いそこまで器用な動作は出来ないとはいえ、拙いながらに僕の弱いところを布越しにしかも足で擦り上げてくるか徐々に熱が集まってくるのが分かった。自分の急所を足蹴にされて、しかもちょっとでも加減を間違えれば大ダメージを受けるという危機感と、普段この場所に絶対触れないであろう足で拙いながらに愛撫を受けているというこの状況が引き起こす非日常感の相乗効果でぞわぞわするような快感を生み出す。虎徹さんが足の指を器用に曲げ、揉み込むような動作をしたから、思わず完全に勃起してしまった。とっさにカップを持つ手に力が入り、くっとカップの側面がゆがむ感覚が分かった。

鈍感な足の裏とはいえ、虎徹さんもさすがに気付いただろう。気まずさから俯いて誤魔化すようにアイスを口に運ぶ。火照った咥内に冷たさアイスが心地よく、少しだけ冷静になれた。

虎徹さんを見れば、先ほど同様そっぽ向きながら相変わらずアイスを食べている。よく見ればもうGreen teaのカップは空になり、今手にしているのはナッツの方だ。そして、知らんぷりしてるはずのその口元はニヤニヤと口角が上がっている。足裏で感じる熱からすべて筒抜けになっていた。

もうこれ以上流されるものか。

せっかくのセックスも中断させられ、中断させられてまで買ってきたゴムのついでのアイスで更にお預けされて、しかも大人しくこちらが耐えていれば今度は自分から仕掛けてきて、でも知らんぷりして。

これ以上虎徹さんを図に乗らせるわけにはいかない。この辺でしっかり叱らないと…。

「さっき中断してまでアイス買ってきたのは誰ですか?食べるなら食べる、ヤるならヤるのどちらかにしてください」

なんでこんな初歩的なことを一回りも年上の人に叱らなきゃいけないんだろう。ため息一つ吐いていると、

「別にどっちかだけって決めなきゃいいじゃん」

なんて虎徹さんが爆弾発言してきた。

「美味いアイスも食べたいし、気持ちいいセックスもしたい。両方欲張ったっていいだろ?」

そういって笑うその瞳は完全に捕食者の眼だった。

「バニー、あーん」

そういって虎徹さんが体を起こし口を開けたから、しかたなく僕はスプーンで掬ったアイスを口元に運ぶ。パクリ、とスプーンを加え、その上に乗ったアイスだけを咥内に残し、スプーンを離す。それと同時に太股に乗せた足を下ろすと、僕の肩に手を乗せ、押し倒してきた。